ぶりとらぶ1
ぶりとらぶ1
「おう!重役出勤かよ、いいご身分だなっ!」
緋影が教室に行くと、もうすでにHRは終わっていた。
痛い頭を抱えながら席につくなり、大竹は自分に声をかけてきたのだ。迷惑この上ない。
「……もう少し小さな声で話せ」
二日酔いのせいで頭が痛むのに、彼の大声を聞いていると頭痛は割れるような痛みから、頭を粉砕されるのではと思うほどにパワーアップする。喉自慢大会にでも出してやりたい。
「うん?小川は欠席か?」
辺りを見渡すと彼女の姿が見当たらない。
「ああ。アパートに電話かけても出ないって先公が怒り狂ってやがった」
ここ、甲陽学園には遠方から通う生徒も多い。自分のように両親がいないという特殊なケースはほとんどないが、通学距離の都合でアパートを借りて一人暮らしをしている生徒ならたくさんいる。
だがおかしい。
少なくとも昨日の夕方までは彼女を見ているのだ、自分は。
それが登校してこないというのならまだしも、どうして連絡が取れないのだ?
思考する緋影の表情は不安に満ちていた。
下校後
制服から私服に着替えてアパートを出る。
夕飯の買出しをすませておかなければ。
小川の安否が気になるが、自分がどうこうできる問題ではないだろう。
思考しながらアパートの鍵を取り出す。
しかし、ドアの施錠を終えて、振り返った緋影は見慣れないものを見た。
アパートの階段をおりた所に一人の人間が立っているのだ。男か女かはわからない。
なぜならそいつは、少し埃がかった白いマントのようなもので全身を隠していたからだ。そのシルエットは人間というより、まるで筒のようだ。
(……何者だ、こいつ?)
警察にでも通報した方がいいだろうか。
不審人物にはかわりない。ポケットの中にある携帯電話に手を掛けた時、
「……気をつけろ」
声が聞こえてきた。そこそこ距離があり、かつ大きな声でもないのに、直接耳元で囁かれたかのような感じだ。声の感触からでさえも男なのか、女なのかわからない。声はどうやら目の前にいる人物のものらしい。
「彼女を探すつもりなら、君は、人間ではない、常識を超えた怪物と戦う事になるぞ」