怪物?
怪物?
彼女?小川のことか?
人間ではない?怪物?
「お前、小川の事を知っているのか?怪物とはなんだ?」
用心しながら白マントに歩み寄りはじめる。
しかし突風が吹き、緋影は咄嗟に左手で視界を覆う。そして、
「なっ?!」
再び眼を向けた時には、白マントの姿はそこにはなかった。
まるで最初から、そんな人物はそこに存在していなかったかのように。
スーパーで買った食材を手に緋影は思考していた。
(あの怪しげな白マントは一体何だったんだ?)
普通ならあんな訳のわからない輩のことはすぐに忘れるのだが、あいつの消え方が尋常ではなかった。どうしても気になる。
(奴と小川の家出は何か関係があるのか?)
家出、ではないかもしれない。
気難しい顔で歩いていると、何やら聞き覚えのある声が聞こえてきた。
向こうでしどろもどろしながら聞き込みをしている大柄な男は……
「……あいつ、何やってんだ?」
あたふたしながら女子高生に大竹は何かを尋ねている。明らかに彼女達から不審人物と思われているようだ。その証拠に三人組の最後尾の女の子は、ポケットの中に手を突っ込んでいる。ポケットは少々膨らんでおり、携帯電話を持っているのがすぐわかる。あの様子では終いには警察を呼ばれかねない。
「まあ、あいつが警察に捕まっても俺には何の影響も……」
ない、と言いかけて背を向けようとする。
だが、緋影は思い出した。
大竹剛は実の姉と二人暮しだ。両親は緋影と同様にすでに亡くなっている。
そしてその姉は現在海外に出張中という事を、緋影は以前大竹から聞いていた。
もし、今彼が警察に補導されるようなことになると……
(まさか俺を身元引受人に指名しないだろうな、あいつ)
数秒思考する緋影。
「……ったく……くそっ!」