駆け出す
駆け出す
「ちっ!やっぱもういないかっ!」
ポイントについた大竹は悔しそうに舌打ちした。
「…………」
緋影も肩を大きく上下させ、息を整える。
「きゃあぁぁぁぁ!」
だが緋影が充分に息を整える間もなく、女性の悲鳴が聞こえた。
「あっちだ、緋影っ!」
悲鳴と共に大竹は再び駆け出していた。
街の中心に位置する公園。
「どうする、緋影?手分けするか?」
「その前にまず警察だろっ!」
携帯電話をポケットから取り出し、手際よく110番を押す。が……
「何でこんな時に限って通じないんだっ!」
電波の状態がよくないのか、電波自体が届かないのか。
こうなったら自分達で何とかするしかなさそうだ。
常備しているカッターナイフをリュックから取り出し、
「くそ、仕方ないっ!大竹っ!」
叫びながら振り向いた緋影は信じられないものを見た。
大竹が地べたに突っ伏しているのだ。
「おい、大竹っ!どうしたっ?!」
「深山君、こんな所で何しているの?」
特徴的な甲高い声。
ゆっくりと、振り向く。隙を見せないように、細心の注意を払って。
「……小川か」
捜していた本人を見つけたにも関わらず、心をどす黒い何かが覆っていく。
「……お前こそ、こんなところで何をしてるんだ?」
声に警戒の色が混じっているのが自覚出来る。
大竹の首には何かが振り下ろされたような痣が出来ている。恐らく、手刀によって出来たであろう、ミミズ腫れした、赤紫に変色した痣。