ぶりとらぶ

小川

小川

周囲に、自分達以外の気配は一切感じない。

百戦錬磨の大竹が、自分よりも強い大竹が、声をあげる間もなく背後に回られて気絶させられた。

……ここにいるのは自分と……

「うん。夜のお散歩だけど」

「…………」

無言で睨む緋影の体には冷や汗が滲み出ている。

圧倒的なプレッシャーを感じる。それこそ蛇に睨まれた蛙のように。

「ああ、大竹君なら心配しなくてもいいよ。気絶しているだけだから」

「!」

なぜ気絶していることを知っている?傍目には倒れているとしかわからないはずだ!

「どうして私が、大竹君が気絶してるってわかると思う?」

……答えは出ている……

だが答えが出たところでどうしろというのか?

自分よりも強い大竹が手も足も出ないような相手に、何が出来ると?

「流石だね、深山君。自分の危険をちゃんと感じているんだね」

「…………!」

薄い微笑みが、この上なく不気味に思える。

「ねえ、ちょっと場所を変えない?」

彼女の提案に緋影は頷くことしか出来なかった。