重い足取り
重い足取り
足取りが重い。
息苦しい。
背中は汗まみれだ。
……どうすればいい?
この危機を、危険を、どう回避する?
自らの思考に混乱する。
彼女は自分の知り合いだ。自分に危害を加えようとはしないはず。
同時に本能が訴える。
……逃げろ、と……
「そんなに緊張しなくてもいいのに」
緊張を見透かしたように小川はふふ、とあどけない笑みを浮かべている。
だが、緊張するなというのが無理だ。
彼女は、もう小川美奈ではない。
何かが、決定的な何かが、変わってしまっている。彼女の周りをどす黒い霧のようなものが覆っているのは気のせいだろうか。
「……どうして今日学校に来なかったんだ?」
まずは彼女の隙を伺う為に話題を振る。
「行かなかったというより、行けないの」
「……どういう意味だ?」
「怖い人がいるから。学校には」
意味深な口調で語る小川に、空寒いものを感じる。
真夏とは思えない夜の冷気は緋影の体を縛り付ける。
「でもうれしいな。深山君が心配して私を捜してくれるなんて」
普段どおりのにこやかな表情。
……だが……
(……何かが、違うっ……!)
「覚えてる?私が不良に絡まれているとこを深山君が助けてくれたの」
「……ああ」
覚えては、いる。
「本っ当にあの時はうれしかった。本当に」
「小川?」
一瞬、彼女の雰囲気がいつもの明るい調子に戻った気がする。
「確か、この公園の近くだったよね」