ぶりとらぶ

ちょっとした思い出

ちょっとした思い出

「何するんですかっ!」

機嫌の悪い夕暮れ時、甲高い女性の声が路地裏から聞こえてきた。

どうせ不良か何かに絡まれたんだろう。運の無い奴だ。

「離して下さいっ!きゃっ!」

スタスタと何事もなかったかのように立ち去ろうとする。

……どうして俺の耳に届く悲鳴をあげるんだ、この女は?

耳に届かない悲鳴をあげれば、このまま見過ごす事が出来たのに。

このまま見捨てたら寝覚めが悪くなるじゃないか。

大きく溜息をつき、息を吸い込む。

足を路地裏に運ぶ。

いかにもお決まりの金髪、ピアスのヤンキー三人が一人の女性を囲んでいた。

「た、助けて下さいっ!」

彼女はそう言って彼女は自分の後ろにまで小走りで駆け寄ってきた。

「おい、兄ちゃん。痛い目見たくなかったらそこどけや」

彼女の足ががたがた震えている。

それはそうだろう。こんな柄の悪いチンピラに囲まれたら何をされるかわかったものじゃない。

「なにシカトしてんだっ!」

怒声と共に男の一人が詰め寄ってくる。

自分の襟首をぐいっ、と締め上げ睨みを聞かせているようだ。

「……ヤニ臭い。離せ」

ぼそり、とそれだけを呟いた。

「―――テメエッ!」

殴りかかってきたそいつのパンチを腰を落としてかわし、みぞおちに肘鉄を打ち込む。

「く、く……か……こ……のっ!」

続いてよろめきながらも悪態をつくそいつの顔面に蹴りを入れる。

景気よく鼻血を流しながらぶっ倒れたそいつを一瞥し、

「……次」

ポケットに手を突っ込みそれだけを言う。

しかし、

「……なんだ。根性の無い奴らだ」

残りの二人はさっさと逃げていた。残された一人が少々哀れだが、まあ自業自得だろう。

「……あの」

彼女はまだ呆然とそこに立ち尽くしていた。

「うん?どうした?」

「確か、一―Bの深山君だよね?」

それが彼女、小川美奈の事を知るきっかけだった。