そうです
そうです
「……ああ。そうだな」
「私にとってあの時の深山君は正義の味方みたいだったよ。困った時に颯爽と現れて悪い奴を倒す、みたいな典型的な正義の味方」
噛み締めるように呟く彼女は遠い日に思いを馳せているかのようだ。
「その時からなんだろうな。深山君のことが好きになったのは」
「…………」
なんて答えて良いのかわからない。
ただ考えるべき事は、自分がある事を聞くべきかどうかということだ。
これを聞けば、もう後戻りはできない。
それでも、聞かなければいけない。
頭上を照らす月が、怪しく輝いている。
「……小川」
「何?深山君」
目線を、彼女から、後ろに組まれている腕に移す。
「……その腕は、どうしたんだ?」
故障しているのか、電灯のついてない公園は薄暗い。
だが、彼女の腕の裾に赤い何かが付着しているのがかろうじて視認出来る。
小川はクスクスと笑いながら、
「すごい。深山君から腕のことに話題を振ってくるとは思わなかった」
楽しみに最後までとっておこうと思ったのに、と残念そうに呟く。
彼女に纏わり着いている闇が広がったような気がした。
「じゃ、見せてあげる」
そう言って前に出した彼女の手は、
「……小川……」
「ははははは、ちょっと派手にやりすぎちゃった」
深紅に染まったどろりとした、血液を纏っていた。
苦渋の面持ちで彼女を注視しながら後退りする。
「駄目だよ、深山君。逃げちゃ」
「!」
突然後ろから声が聞こえた。
後ろを振り向くと彼女がふふふ、と小さな声をあげて笑っている。