ぶりとらぶ

魔法陣

魔法陣

赤い魔法陣によって具現化された、緋影と乖離した『心眼』としての『心の存在』を、自分自身の『心眼』の能力で切り裂き、弱体化させる。『心眼』の能力だけを『消滅』させられるだけの力は今の自分にはない上に、この封印術では緋影と『心眼』を完全に切り離すことすら出来ない。弱体化させた後で、『眼鏡』を力の源とした封印術で、『心眼』を一時的に沈静化させる。今の段階では『心眼』を沈静化させ、一時的に封印を施す術しかない。

 少しずつ緋影の眼に正気の光が戻り始める。封印術と共に記憶の操作を開始。

 この状況では緋影の記憶を擦り替えるには一つしかない。

 自分自身が、緋影の母親を、自分の妻を殺した、と擦り替える。

 これしかない。記憶だけならば完全なコントロールが出来るはず。

 自らの精神力を限界まで引き出す。

 「ん。あれは……貴様っ!そこで何をやっているっ!」

 巡回していた警官の叫びで、初めて誠一は周囲の注意を怠っていた事に気付いた。

 状況は普通に考えれば自分が妻を殺したと判断される。

ここで自分が捕まれば、遅かれ早かれ緋影は『心眼』によって脳の過負荷に陥り、死に至る。記憶のコントロールはまだ完全ではない。

しかし、緋影を助ける為にも自分は捕まる訳にはいかないっ!

 「緋影っ!十年、十年だっ!十年でお前を救う方法を見つけ出してみせるっ!それまで……それまで無事でいてくれっ!」

 夕日と緋影に背を向けながらそれだけを叫び。

 断腸の思いで誠一は駆け出した。