お茶
お茶
……彼女がいなくなって初めてわかった。
きっちりと整理された生活感のある部屋。あたたかい緑茶。
……そんなものよりも、彼女の存在が自分の心を落ち着かせる。
いくらか戻った思考が、正気が訴える。
自分は人殺しで。親殺しで。どうしようもない奴なのに。
彼女は自分を気遣ってくれる。
こんなふうに自分のアパートに上げて、色々と優しくしてくれる。
……それが当然である事かのように……
彼女に優しくしてもらう資格なんてどこにもないのに。
それでも思う。葵に早く戻ってきて欲しい。一秒でも早く。
……そんな事を言える存在じゃない、とはわかっていても。
(……俺は……なんて傲慢なんだっ!)
さっきまでは一人の方が楽だったのに。
今では葵がいないだけで、叫びだしたいくらい、狂いそうなくらい不安だ。
がちゃり、とドアが開く音が居間まで聞こえてきた。
葵は両手に大きな袋を持っており、中身には色々な物が詰まっていた。どうやら近くのコンビニに行っていたようだ。
「深山君、服と下着を買ってきたんで、これに着替えて下さい。安物ですけどそれは勘弁して下さい」
ビニール袋から服を引っ張りだして緋影に手渡すと、彼女は袋から食材を取り出し、食事の支度に取り掛かろうとする。
「……どうして……」
「何か言いましたか?深山君?」
耳に呟きを捉え、問い返す。緋影はぼうっ、とただ立ち尽くしている。
「……どうして、先輩はここまで俺に優しくしてくれるんです?……俺は……俺は先輩の優しさを受ける資格なんて無い人間なのに……」
だが葵は緋影の様子にも構わずに、
「そうですか。深山君、自分が悪い人間だと思い込みたいんですね」