悪者
悪者
針で突っつくような眼を彼に向けてどうにか黙らせる。
「それはそうとお前がどうしてここにいるんだ?」
目の前には額に皺が浮かんだ大きなごつごつとした大竹の渋面。
「そういうお前こそ、ここにどうしているんだよ」
「買い物に決まっているだろ。見てわかんないのか?それより、その格好、まさかとは思うが小川を捜す気か?」
彼は筆記用具一式とハンドブックの地図片手に持ち、肩には重そうなリュックが食い込んでいる。
「悪いかよ」
大竹は気分を害したように、ムッと腕を組む。
「……全く。このお人好しが」
呆れたように呟く。
「喧嘩に絡まれている奴がいれば『しょうがねえな』って顔で割って入る深山緋影君には言われたかねえよ」
大竹も緋影の眼を真っ向から受け止める。
睨み合うこと数分。
「とにかくこれはお前に関係ないことだろ。じゃあな」
そう言って大竹は背を向ける。
(……関係ないのはお前もだろ。それに、さっきみたいな聞き込みを続けてお前が補導されると俺が困るんだよ)
かと言ってお人好しの大竹に『小川を捜すな』というのは具合がよくない。
それに彼女の失踪は緋影自身も気に病んでいた。
「待て」
そう言って大竹の肩をつかむ。
「小川の捜索を止める気はないんだな」
「ああ」
確認に大竹は即座に頷く。緋影は深く溜息を吐き出した。
「なら、俺も小川を捜す」
「……どうしてだよ」
「お前が警察に補導でもされると、俺が身元引受人になるしかないんでな」