散歩
散歩
笑顔を向けた。有無を言わさぬ見事な笑み。
大竹は助けを求めるよう後ろを振り向くが、
「……お前があんな大声を出すからだ。諦めろ」
この馬鹿、と声には出さずに呟く。
だが内心緋影はほっとしていた。これで面倒ごとに首を突っ込まずにすむと。
「それでは、大竹君、深山君、帰りましょ」
葵は彼の腕を取って歩き出す。緋影もそれに倣って歩き出したが、
「どうしました?」
急に緋影が立ち止まって後ろを凝視していたので彼女は声をかけた。
「何かいるのか、緋影?」
大竹の声にも緊張感が張り詰めている。
「……いや、気のせいだろう。行こう」
緋影はかぶりを振り、何事もなかったのように静かに歩き出す。
三人のはるか頭上、高層マンションの屋上。『気配』はそこにいた。
「……まだ、封印は解けていないようだな」
白マントは緋影を観察するように見つめている。
「……いまだ時期尚早か」
星を見上げながら事実を確認するように呟く。
「しかし、奴の気配は勿論だが、私の気配にも気付くとは……流石だな」
白マントは緋影に視線を戻すとマントを翻し、夜の闇に消えていった。