数分後
数分後
数分後には人通りの多い場所に出た。ここなら人込みに紛れる
ことが出来る。
大竹は無言で自分の眼を見つめている。気は進まないが仕方が
ない。
「さて、大竹……」
くん君、と彼女が呼ぶ前に大竹は葵の手を振り解き、逃走していた。
「ちょっとっ!一体……あ、深山君っ!」
その隙をついて緋影も彼とは全く別の方向に逃げ出す。
「もうっ!一体何をする気なんですかっ!」
葵は緋影を追い始めたが、彼女より先に逃げ出した緋影の足に適うはずもなく、すぐにその姿を見失ってしまった。
緋影はさっきの場所、妙な気配を感じた地点に戻って来ていた。
一分ほど遅れて大竹もやってくる。
「……やっぱここか?」
緋影は神妙な面持ちで頷く。
「さっきの気配……一つはうまく殺してたが、後ろから感じたもう一つの気配は明らかに俺達を尾行してた」
「どっちを捜す」
「後ろの気配を捜す。まだ近くにいるかもしれない」
気配を追う理由。それは大竹も同様のはず。
一つの気配はそこに存在したかどうかもわからない曖昧な気配だが、後方から感じた気配は見知ったもの。
小川かもしれない。
思い込みかもしれないが、この気配は無視してはいけない気がする。
ポケットに手を突っ込み、ポイントを記した地図を取り出す。
「ここから一番近いのは……あっちか。まずはそこを当たろう」
二人は全速で駆け出した。